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Author Archives: 河村 拓

『iPhoneショック ケータイビジネスまで変える驚異のアップル流ものづくり』

林信行さんの著書、「iPhoneショック ケータイビジネスまで変える驚異のアップル流ものづくり 」を読んだ。
本書を読むと、iPhoneのすごさと、なぜiPhoneのような製品が日本のメーカーから生まれなかったのかがよくわかる。
日本のケータイビジネスには、致命的な欠陥がある。
iPodに続き、ついにアップルは携帯電話まで作ってしまった。
その衝撃は大きい。
圧倒的に魅力的な端末を作り上げることで、アップルは直接iPhone端末を販売し、更に月額サービス料の一部をキャリア側から上納させる新しいケータイのビジネスモデルを作ってしまった。
従来はメーカー側が端末をキャリア側に売り、キャリア側が月額サービス料で利益を得るという仕組みだった。
そのためメーカー側はどうしてもエンドユーザーよりも端末を購入してくれるキャリア側がお客様になってしまい、キャリア側>メーカー側の力関係が生まれてしまった。
iPhoneはこの力関係を逆転させてしまったのだ。
アップルがiPhoneの開発に成功した背景には徹底した「顧客志向」がある。
「ユーザーがどうすればより喜んでくれるか」「どうしたらユーザーが買いやすいか」といったことを彼らは熟考し、できる限りの心づくしをする。
そして、ここに日本のケータイメーカーとの大きな差がある。
日本のケータイビジネスには、キャリア側>メーカー側の力関係がある。
端末を直接買ってくれるのはエンドユーザーではなくキャリア側なので、キャリア側がお客様になってしまい、メーカー側はキャリア側が指定する仕様を満たす端末しか作らなくなってしまう。
エンドユーザーの好みや動向よりも、キャリアの意向を優先する開発環境が、本当に魅力的な製品を作れなくしてしまっているのだ。
iPhoneは近々日本にも進出してくるだろう。
日本のケータイメーカーが生き残るには、まずは原点に戻って「顧客志向」を徹底したモノづくりをはじめなければならないだろう。

iPhoneショック ケータイビジネスまで変える驚異のアップル流ものづくり
iPhoneショック ケータイビジネスまで変える驚異のアップル流ものづくり 林 信行

日経BP社 2007-12-13
売り上げランキング : 114936

おすすめ平均 star
stariPhoneは何を伝えたのか?
starこの本を読んで受けた印象は「アップルの戦略のうまさ」。
stariPhoneとアップルに関して余すところ無く書いてある

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『非属の才能』

山田玲司さんの著書、「非属の才能」を読んだ。
●「空気が読めない奴」と言われたことがある
●まわりから浮いている
●「こんな世の中おかしい」と感じている
●本当は行列なんかに並びたくないと思っている
●のけ者になったことがある
こんな人には「非属の才能」がある。
なぜならば、才能というものはどこにも属せない感覚の中にこそあるからだ。
しかし、群れの掟に従い、自分を周囲に同調させてしまうと、人と違う自分だけの感覚、自分だけの才能がすり減ってしまう。
「みんなと同じ」という価値観に染まってはならない。
これが著者の主張である。
本書を読んで私は、「人と異なることをすること」ではなく、「自分の価値観や考えを信じること」に本質があるのだと感じだ。
なぜならば、人と異なることそれ自体は何も価値を生まず、その「異なる部分」から新しい価値を生み出して初めて意味があるからだ。
例えば、集団行動の際にみんながこうしようと言っているときに、自分はみんなとは違う道を行くといってそれを拒絶する人は単なる協調性のないわがままな人間に過ぎない。
「こうしたほうがよりいいのではないか」と対意見を出し、周囲に自分の考えのほうがなぜ正しいか、よりよいかを伝えることができて初めて新しい価値を生み出せる。
よって、大事なのは人と異なることではなく、人と異なる自分の本当の姿を信じて、それを周囲にも理解してもらうことなのだ。
ここで問題になってくるのが、周囲の圧力だ。
「これが正解」「これがふつう」「これがあたりまえ」「これが常識」という同調を求める環境が世の中には蔓延している。
「なぜ?」と聞いた際に「それが常識だ」と言う答が返ってきて、イライラしたことがないだろうか。
ここで周囲の圧力に負けて楽な道を選んでしまってはだめだ。
自分の意見を曲げるのは、相手の意見のほうが正しい、またはよりよいと自分が納得した場合のみだ。
「あたりまえ」とか「常識」がすべて正しければ、健康に悪いうさぎ跳びをやらされることもなかっただろうし、昔はできないことがあたりまえで常識だったことを可能にしてしまった発明は何度も繰り返されている。
自分の声に従う勇気を常に持っていたい。
Follow your heart.
―Steve Jobs
行列に並ぶより、行列に並ばせてやろうじゃないか。
―山田玲司

非属の才能 (光文社新書)
非属の才能 (光文社新書) 山田 玲司

光文社 2007-12-13
売り上げランキング : 30408

おすすめ平均 star
star納税マシーン
star特に読む必要もない様に思います。
star社民党みたい

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『本は10冊同時に読め!―生き方に差がつく「超並列」読書術 本を読まない人はサルである!』

成毛眞さんの著書、「本は10冊同時に読め!―生き方に差がつく「超並列」読書術 本を読まない人はサルである!」を読んだ。
本は最後まで読む必要はない、仕事とは直接関係のない本を読め、読書メモはとるな、本は10冊並行して読めなど、今まで読んだ読書術の本とは180度異なる内容が多かった。
ただ、その根拠もしっかり書いてあるので、著者の言う「超並列読書術」をそのまますべて取り入れずとも、生かせるものは多いと思う。
ただ、ところどころ気になる表現が多い。
庶民と言う言葉をやたら用いたり、「たとえば趣味は読書、最近読んだ本はハリポタ、セカチューという人は救いようのない低俗な人である」と言ってみたりと、人を見下した表現が目立つ。
成功本やハウツー本を馬鹿にしながら、自分も「超並列読書術」のメリットをくどいほど書き並べると言う自己矛盾にも陥っている。
反感を与えながら人を変えることはできないとはよくいうが、本書もせっかく内容は面白いのにやたらと人を挑発しているのがもったいない。
要するに人とは違っていることに価値を感じる「変わり者」なのだろう。
本書で言わんとしていることは面白いのだが、「一緒にお茶はしたくない」人かもしれない。

本は10冊同時に読め!―本を読まない人はサルである!生き方に差がつく「超並列」読書術 (知的生きかた文庫)
本は10冊同時に読め!―本を読まない人はサルである!生き方に差がつく「超並列」読書術 (知的生きかた文庫) 成毛 眞

三笠書房 2008-01-21
売り上げランキング : 20437

おすすめ平均 star
star愉快痛快不愉快怪物くん
star様々な種類の本を大量に読むことの大切さを説いた本
star創造力を養うために本を大量に読む方法

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『打たれ強くなるための読書術』

東郷雄二さんの著書、「打たれ強くなるための読書術」を読んだ。
残念ながら私にはちょっと物足りない内容だった。
著者は現代の若者に対して、本を読む習慣がないことから、「知的に打たれ弱い」人達が増えていると訴えている。
どういう人かと言うと、以下のような人達だ。
●すぐに解答をほしがる
●どこかに正解がひとつあると信じている
●解答に至る道をひとつ見つけたらそれで満足してしまう
●問題を解くのは得意でも、問題を発見するのが不得意である
●自分の考えを人に論理的に述べる言語能力が不足している
そこで知的に打たれ強くなるための読書術が出てくるわけだが、特に目新しい情報や理論があるわけではなく、これといった発見が残念ながらなかった。
それよりも主張の内容とはそれほど関係があるとは思えない雑学が頻繁に出てきたり、「あらゆる本は著者の主観というバイアスがかかっている」という主張の例として「日本の歴史は今考えられているよりも一万年は古く、超古代には宇宙船が飛び回っていた」と述べているような著書を引っ張り出してくるなど、首を傾けたくなる部分が目に付いてしまった。
また、知的に打たれ強いというのが結局どういうことなのかというのも、あまり語られていない。
中身が薄くつまらない本(著者はスカ本と呼ぶ)を読んだ日には、その本を読むために払ったお金と費やした時間がもったいなく、悔しくて夜も眠れなくなると著者は言うが、打たれ強いとはあまり思えない。
ただ、著者の言う「複数の視点を獲得する」ということは重要だと思う。

ひとつの視点からだけ物を見ていると、自分の考え方が絶対に正しいものに見えがちである。
「自分を組み換える」ということのひとつの意味は、複数の視点からの物の見方を学ぶと言うことでもある。

自分が自分の考えや主張を正しいと考えているのと同じように、他人も自分を正しいと考えているのだと言うことを理解し、自分と異なる価値観を許容する姿勢を持つことは、「自分が絶対ではない」ことを認めることでもある。
多様性や可能性を認める余裕を持った、「知的に打たれ強い」人になりたいと思う。

打たれ強くなるための読書術 (ちくま新書)
打たれ強くなるための読書術 (ちくま新書) 東郷 雄二

筑摩書房 2008-02
売り上げランキング : 36801

おすすめ平均 star
starここの利用者には必要ないかも
star読書術はよいのだが
star読書好きにはたまらない

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『レバレッジ・リーディング』

本田直之さんの著書、「レバレッジ・リーディング」を読んだ。
読書術の本なのだが、この本が扱うのは「ビジネスで成功するための読書術」である。
著者はビジネス書を読むことを「最も効率のいい投資方法」と捉える。
というのも、ビジネス書には世界的な経営者やさまざまなビジネスで成功した人のノウハウが詰まっている。
汗水たらし、血のにじむような努力をした他の人の数十年分の試行錯誤の軌跡が、ほんの数時間で理解できてしまうのだ。
誰かが成功したやり方を学び、そこに自分なりの応用を加えることで、試行錯誤ではなく結果を出すことに時間や労力を使うことができるようになるのだ。
そんな著者の読書術には、すぐにでも実際に取り入れてみようと思ったポイントがいくつかあった。
・一日一冊くらいのペースで本を読むこと。
・本を読む際、選ぶ際にはあらかじめ「目的を持っておく」こと。「自分の人生の目標は何か」「現状の課題は何か」という大きな目標のもとに「今、自分にどんな本が必要か」を考えて選ぶ。そして目的に照らした「重要な部分」を意識しながら読み進める。それが、本で得た知識を効率的に実践することにつながる。また、「読みやすい本」「経験型の本」を選ぶようにする。理論よりも実践のノウハウが即戦力になる。
・同じテーマの本をいくつも読むこと。複数の意見を同時に吟味することで重要なポイントを見出したり、考えが偏ったりすることを防いだりするのに役に立つ。
・周りにも同じ本を薦めることで、共通認識を持たせる。
・緩急をつけて読む。重要なところはじっくり読み、あとは流し読みすることで効率よく進める。
・重要な部分はメモを残し、繰り返し確認することで内容を自分になじませる
参考になる内容だった。
早速「実践に移す」ことで、しっかりと自分への投資としたいと思う。
最後に、「成功する人は読書をする」のだそうだ。
※明日から二泊三日で旅行に行くので、ブログはお休みです。
※全国数万人の読者の皆様、すいません。

レバレッジ・リーディング
レバレッジ・リーディング 本田 直之

東洋経済新報社 2006-12-01
売り上げランキング : 2052

おすすめ平均 star
star本の読み方が180度変わりました。
starビジネス書は、メモを取って実践しよう
star本に対する価値観を買えた一冊

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『4-2-3-1―サッカーを戦術から理解する』

杉山茂樹さんの著書、「4-2-3-1―サッカーを戦術から理解する」を読んだ。
今までワールドサッカーダイジェストなどのサッカー雑誌は定期的に講読していたが、今回読んだような「戦術に特化した著書」は初めてだ。
著者はライターとしてサッカー専門誌などで執筆しているのだが、海外取材も多く、何度も日本と海外を往復しながら、ファンハールやヒディンクといった「名将」と呼ばれるような世界の戦術家たちに直に話を聞く機会も多いようだ。
その著者の言葉に耳を傾けると、日本が今までどれだけ時代錯誤で拙いサッカーをしてきたかがよくわかる。
日韓ワールドカップでトルコに消化不良な試合で負けたのも、ドイツワールドカップで何もできずに惨敗したのも、わかりきっていた「必然」であったのだ。
トルシエは攻撃的サッカーを志向するといいながら戦術の流行からは当時衰退していた「フラット3」なる3-4-1-2という守備的な布陣を選択した。
ジーコも、南米にも欧州にも個人スキルで明らかに劣るにもかかわらず「戦術」という知恵を絞らず、ブラジル的な強者のメンタリティーで「4-2-2-2」という攻撃と守備を分担するような相当時代遅れな布陣を用いた。
どちらも攻守のキーポイントとなる両サイドに一人ずつしか配置せず、常にサイドの攻防で劣勢を強いられたことも共通する。
また、当時多くの日本人が戦術を「3バックか4バックか」のまるで2択しかないかのように語っていたが、3バックと4バックにもいろいろなバリエーションがあるし、そもそもディフェンスの数だけでサッカーをするわけではない。
ディフェンスに多くの人数を裂く4バックよりも3バックのほうが攻撃的だなどという指摘がいかにまとはずれなことか。
これも、戦術を「司令塔」や「ボランチ」など、選手のキャラクターで語ってしまうことに原因がありそうだ。
サッカーに興味のある人なら、是非本書を読んでおくべきだと思う。
きっと、サッカーを見るときの視点が変わるはずだ。
といいつつ、今朝行われたマンチェスターU対バルセロナの試合は睡魔に負けて見れなかったが。

4‐2‐3‐1―サッカーを戦術から理解する (光文社新書)
4‐2‐3‐1―サッカーを戦術から理解する (光文社新書) 杉山 茂樹

光文社 2008-03
売り上げランキング : 3594

おすすめ平均 star
star示唆に富む内容ではある
starサッカー国際試合を観るのが楽しみになった
star日本代表の選考を考えるべき

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『iPodは何を変えたのか』 後編

スティーブ・レヴィさんの著書、「iPodは何を変えたのか」を読み終わった。
今回は、iPodをiPodたらしめているものとは何か、と言うことを考えてみたい。
2005年1月、アップルはiPodの廉価モデル、iPod shuffleを発表する。
Steve Jobsによると、この新しいモデルは予算の厳しい人々にもデジタル音楽への門戸を開放することが狙いだった。
しかし問題はあった。
販売価格を99ドルに設定したものの、そのためには既存のiPodの基本的な構成要素である液晶の操作画面、スクロールホイール、ハードディスクドライブはどれも値段が高すぎた。
この問題を解決に導いたのは、Jobsの閃きだった。
当時のアップルは、すでにiPodユーザーのほとんどがシャッフル機能に夢中になっていることを知っていた。
そこでJobsはこんなことを言ってのける。
「よう、とんでもないアイディアを思いついたよ。これ、シャッフル前提の製品にしてみたらどうかな。もしそういう製品を作ってみたら、どんな感じだと思う?」
シャッフル前提の製品にしてしまえば、ユーザーがすべての曲を閲覧するための装置が不要になる。
精密なスクロールホイールは不要になるし、液晶画面もいらない。
必要なのは、いつシャッフル再生を開始するかを伝える機能だけだ。
しかし、iPodを卓説した音楽プレイヤーにしている要素である液晶画面やホイール、メニュー選択のインターフェイスを取り除いたものは、果たしてiPodと言えるものなのだろうか?
iPodをiPodたらしめている要素とは?
Jobsの答はこうだ。
「iPodというのは、卓越した音楽プレイヤーのことなんだ。」
つまり、聞きたい曲を簡単に選択できなかったり、現在聞いてる曲が何なのか知る方法すらないことは、iPod shuffleの欠点ではないのだ。
むしろ、音楽ライブラリをすべてごちゃ混ぜにしてユーザーの予期せぬ曲順再生を実現するという優れた機能であり、この製品の一番の特徴なのだ。
広告キャンペーンにおいても、この制約をこのように讃えている。
「すべて偶然に任せよう」
「人生はランダムだ」
iPodの持つ美しいデザイン、優れたメニュー選択のインターフェイスや液晶画面、スクロールホイールも確かにiPodを特別たらしめている要素だが、それが本質ではないのだ。
本質は、「誰でも簡単にいつでも好きな音楽を楽しめる音楽プレイヤーである」ということ。
美しいデザインも、スクロールホイールも、この本質をサポートするための「機能」なのであって、本質である「音楽プレイヤーである」という要素が満たされていなければ、単なる飾りに過ぎないのだ。
思い出してほしい、他企業の出したポータブルMP3プレイヤーがことごとくiPodにこてんぱんにされたことを。
確かにiPodよりも容量が大きかったり、機能が優れていたり、安価だった製品はあっただろう。
しかし、「誰でも簡単にいつでも好きな音楽を楽しめる」という本質において、iPodを上回った製品は一つもなかったのだ。
「高度なことが簡単にできる」というアップルの貫き続けたポリシーが、大勝利したのだ。

iPodは何を変えたのか?
iPodは何を変えたのか? 上浦 倫人

ソフトバンク クリエイティブ 2007-03-29
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おすすめ平均 star
starジョブスと長い付き合いの著者ならでは迫真の記述
star★「ニューヨークを盗んだのは、あの機械だ」★
stariPodの開発神話が満載

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『iPodは何を変えたのか』

スティーブ・レヴィさんの著書、「iPodは何を変えたのか」を今読んでいる。
とりあえず半分ほど読み終えたので、少しまとめておこうと思う。
以前読んだ「スティーブ・ジョブズ-偶像復活(4月11日の記事参照http://d.hatena.ne.jp/lemoned-icecream/20080411)」ではスティーブ・ジョブズの生い立ちから現在までを幅広くカバーしていたのに対し、本書はiPodにフォーカスを当てているため、iPodに関してはより突っ込んだ中身になっていた。
今回はその中の、「オリジン(起源)」という部分から、iPodの開発過程を扱いたい。
iPodはプロジェクトにゴーサインが出た段階で、発売日が決定された。
この種の製品開発には最低でも一年はかかるというのが業界の常識なのだが、彼らはそれを6ヶ月で作ろうと決めるのだ。
しかも、それまでアップルが製造してきたものとはまったくジャンルが異なる、画期的な製品を、だ。
家電製品が最も売れる十二月のクリスマスシーズンに間に合わせるため、彼らの戦いが始まった。
結局一週間遅れたものの、ほぼ予定通りの十月二十三日にiPodは発表されるのだが、不可能とも思えたプロジェクトを可能にしてしまったその過程は、どのようなものだったのか。
ここでジョブズと開発チームの日々のやり取りがどのようなものだったのかを連想させるいくつかのエピソードを引用したい。

ポータルプレイヤーの開発エンジニア、ベン・クナウスは、後にワイアード・ニュースに「彼らが会議を開くと、そこでジョブズが『曲を選択するまでに三回以上もボタンを押させるな!』って怒鳴りまくるんだ」と語っている。
「で、僕らに指令がやってくる。『ジョブズは音が小さすぎる、音質にシャープさが足りない、メニューが表示されるのが遅すぎると言っている』ってね。
ジョブズはそういう風に、言わなきゃいけないと思ったことを毎日コメントしてたよ。」

一方アップルの社員たちは、そんなジョブズと四六時中やりとりをしなければならなかった。
彼は試作品を取り上げて、ここがいい、あそこが気に食わないといい、あらゆる相手に威圧的な質問を浴びせかけた―君はこの開発プロジェクトで、いったいどんな貢献をしてるんだ?

ジョブズの意見は、ときとして従業員を仰天させる。
あるデザイナーが、電源を入れたり切ったりする電源ボタンは当然必要ですよね、と言ったところ、彼は一言「いらないよ」と答えた。
彼がこういえば、それが最終決定だ。

なるほど、ジョブズが開発チームに連日のように注文をぶつけていたのがわかる。
時には煙たがる社員もいるんじゃないかと思うくらい、そのやり取りは穏やかには見えない。
しかも、ジョブズが一言言えばそれが最終決定になるような開発環境で、従業員たちに不満はたまらないのだろうか?
ましてや、ボトムアップなしで本当に「パーフェクト」と形容されるような製品が生み出せるのだろうか?
答はノーだろう。
次のエピソードを見ればわかると思う。

ジョブズの考えでは、必要なボタンは、ホイールの周辺に配した「進む(次へ)」「戻る(前へ)」「ポーズ(一時停止)」ボタンの三つだけだった(多大な努力の果てに、開発チームはジョブズに、リスト階層をたどるための「メニュー」ボタンを追加することをどうにか認めさせた)。

決してジョブズの意見ですべてが決まったわけではないのだ。
お互いの主張を徹底的にぶつけ合う、本物のコラボレーションがあったのだ。
コラボレーションについては以前紹介した著書、「組織変革のビジョン(4月16日の記事参照http://d.hatena.ne.jp/lemoned-icecream/20080416)」で以下のような記述があった。

コラボレーションとは、違った考え方、違ったアイデア、違ったイメージ、違った発想法の出会いと言える。
その個性の出会いをなんとか丸くおさめてしまおうとするのではなく、お互いの個性をぶつけあい、火花を散らす。
そうしたときに、イノベーション(変革)やエボリューション(進化)が起こる。

まさに火花を散らした結果、iPodという大発明が生まれたのだ。
ジョブズの細部に対する偏執狂的なこだわりと情け容赦のない意思疎通のスタイルが、競合製品をあらゆる面で上回る製品を開発する原動力になっていたことは、著者も述べている。
また、この意思疎通にチーム全体がついてこれたのは、開発者自身がiPodに魅了されていたことが大きかったのだと思う。

アップルの開発チームの面々はみな熱烈な音楽好きで、彼らはiPodに打ち込むほどに、自分は今、自分自身が使ってみたくてたまらない背品を作っているのだという誇りと喜びを噛み締めていた。
ジェフ・ロビンは「メンバーはみんな、この製品の開発にかかわれることに興奮していた。ある意味、これはみんな自身の夢を実現するプロジェクトだったんだ」と言う。

自分たちが心からほしいと思えるような製品を、妥協のない意思疎通で開発したからこそ、iPodはこれほどまでにユーザーから絶大な支持を得られたのではないか。
背景に多大な勤勉さがあったのは、言うまでもないだろう。
「iPodは何を変えたのか 後編」

http://d.hatena.ne.jp/lemoned-icecream/20080423/1208933135

iPodは何を変えたのか?
iPodは何を変えたのか? 上浦 倫人

ソフトバンク クリエイティブ 2007-03-29
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starジョブスと長い付き合いの著者ならでは迫真の記述
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『斎藤一人の絶対成功する千回の法則』

斎藤一人さんの著書、「斎藤一人の絶対成功する千回の法則」を読んだ。
昨日紹介した「ツイてる!」で垣間見た一人さんを、もっと追及してみたかったのだ。
一人さんは普段からよく「ツイてる」という言葉を頻繁に使うのだそうだ。
何かの拍子に「ツイてるな~」と言う事もあれば、唐突に「そういえば俺ってツイてるな」ということもあるらしい。
そして、このように普段から口癖のように「ツイてる」と言葉を発することが、本当にツキを呼んでくるのだという。
そして、自分の成功は「ツイていたから」と断言している。
この意味を自分なりに考えてみた。
そして、「ツイてる」という言葉には二つの重要な意味があるのだと思った。
一つは、今現在自分が幸福であることを気づかせてくれるということだ
幸せだから「ツイてる」と言うのではない。
「ツイてる」と言うことで、自分が幸せであることを思い出すのだ。
唐突に「自分はツイてる」と言うと、自然とその理由を考え出す。
すると、例えば私であれば、家族が健康であったり、食事に困るようなことがなかったり、好きな本をお金で買って読むことができたりと、実は非常に恵まれていることがわかる。
当たり前のこととして何気なく見落としがちだが、それがもし満たされてなかったらと思うとぞっとする。
「自分はツイてるんだ」と言うことで、自分が今のままでもこの上なく幸福であることを思い出し、今を前向きに捉えるようになる。
もう一つは、この幸福が決して自分の力でもたらされたものではないことを思い出させてくれることだ。
家族の健康、食事、本、どれも自分の力だけでどうこうなるものではない。
同時に今の自分があるのも、自分の力ではなく、家族をはじめとした周囲の人達、社会制度、自然の恵みなど、さまざまな支えがあってこそなのだ。
そう、自分にコントロールできない、「ツキ」なのだ。
周囲のおかげさまで自分が生かされているのだと思い出すことで、私たちは謙虚さを取り戻せる。
おごり高ぶって自分の力を過信して無茶をして失敗するようなこともなくなる。
「ツイてる」という言葉には、幸福であるという要素と、偶然であるという要素がある。
だからこそ、この言葉が大事なのだろう。

斎藤一人の絶対成功する千回の法則
斎藤一人の絶対成功する千回の法則 斎藤 一人

講談社 2003-05
売り上げランキング : 3667

おすすめ平均 star
star言葉の力を心から再認識
star声に出すと願いは叶う
star受け止め方次第

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『ツイてる!』

斎藤一人さんの著書、「ツイてる!」を読んだ。
斎藤一人さんについては以前の記事で簡単に紹介したが、やはりというべきか、不思議だなと思いつつも共感してしまう、そんな内容の一冊だった。
著者は自分の成功の秘密について語るのだが、その秘密を「ツイていただけ」だと言い切るのである。
私が特に気に入ったのは、「第三の目」の話と、「100%自分の責任」という話だった。
悩んでいたり怒っていると、眉間にシワが寄り、口がへの字に曲がってしまう。
こんな顔つきをしていると、眉間にある「第三の目」と呼ばれる目が閉じてしまうのだ。
別に天津飯ではない。
著者が言うには、この「第三の目」というのはいろいろなものを見渡せる目で、ここを通じて得た情報からいいアイディアが生まれてくるのだそうだ。
だから、眉間にシワを寄せていると目が隠れてしまい、ロクでもないことしか思いつかなくなってしまう。
私の場合、笑顔で、上機嫌でいるときは心に余裕が生まれ、視野が広くなる。
こういうときに楽しい発想、アイディアが出てくる。
逆に不機嫌なときは目が曇ってしまい、周りがよく見えず、つい「ロクでもないこと」を言ったり考えたりしてしまいがちだ。
こういうときは物事がうまくいかない。
著者はそういうことを、「第三の目」という絶妙な表現で言い表しているのだろうか。
また、「100%自分の責任」という話では、男運のない女性を例にあげている。
素敵な男性とめぐり合って結婚するも、男性が浮気して離婚する。
こんなことを何度か繰り返している女性がいるとする。
そんな時、「自分は男運がないんだ」と考えるのではなく、「100%自分に責任があるんだ」と考えると、物事が好転し始める。
例えば結婚してからおしゃれを怠り、魅力のない女性になってしまっていたとか、店屋物ばかり食べさせて旦那さんを辟易とさせていたとか、自分の改良すべき点がわかり始めてくる。
そこを改良すれば男性は浮気しなくなり、問題は解決するのだそうだ。
要するに、人のせいにして悲劇のヒロインで終わるのではなく、自分が変わることで現実を変えるのだ。
さて、一冊を通して読み、私は一つ考えたことがある。
それは、著者はどこまでも楽観主義であるということだ。
それを象徴するような著者の言葉が、「困ったことは起こらない」である。
これは問題は起こらないということではない。
何か問題が出てきたときに「どうしよう困った」と否定的に考えるのではなく、「よし、これは自分が成長するためのチャンスなんだ」と肯定的にとらえるのだ。
そうして、まるでゲームをするかのように、問題を楽しみながらすいすいと解決してしまう。
問題が起こっても「成長のチャンスだ、ツイてる!」と考え、「100%自分の責任」という立場から自分を変えることで周りも変えてしまい、常に第三の目を大きく見開き、広い視野に映るものを楽しみながら、頭は楽しいアイディアでいつもいっぱい。
そんな「斎藤一人」像が私の頭に浮かんできた。
成功というのは、どんな偉大な事業を起こしたとか、どれだけお金を稼いだとか、そういうことだけで定義するものではないのだろう。
自分がいかに恵まれているかを理解し、毎日を楽しみ、日々向上していく人こそが「成功者」なのだと感じた。

ツイてる! (角川oneテーマ21)
ツイてる! (角川oneテーマ21) 斎藤 一人

角川書店 2004-08-07
売り上げランキング : 1758

おすすめ平均 star
star真の意味を理解するのは難しい!?
star神楽ポイント
star修業中

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